ニュースの概要
10月8日は「そばの日」とされ、コンビニのセブン-イレブンや駅そばチェーンなどが、この日に合わせた限定企画を展開した。そばの量を2倍にしても追加料金がかからないサービス、肉を2倍にしたメニュー、収穫したての新そばを使った一杯などが並び、いこーよニュースが「今食べたいそば8選」として紹介している。語呂合わせの記念日を足がかりに、各社が量、具材、旬という三つの切り口で来店や購入のきっかけを作っている点が目を引く。値上げが続く外食業界で、あえて「お得感」を前面に出す動きでもあり、客数をどう取り戻すかという各社の狙いがにじむ。
引用元: 10/8はそばの日!2倍盛り無料に肉2倍&新そばも!今食べたいそば8選|セブン・駅そば(いこーよニュース)
分析・見解
麺の2倍盛りは、実は原価がほとんど増えない
そばの2倍盛り無料は、一見すると大盤振る舞いに見える。しかし外食の原価構造を見ると、事情が少し違う。駅そばのような業態では、一杯の原価率は三割前後とされる。その内訳で大きいのは、つゆの出汁、天ぷらなどの具材、そして人件費である。麺そのものは乾麺や冷凍、生麺の業務用で、一玉あたりの仕入れ値は数十円程度にとどまる。
つまり麺を倍にしても、原価の増加は一杯数十円で済む。一方で客が受け取る印象は「二倍もらった」という強いものになる。同じ値引きを百円で行うより、体感の満足度は高い。原価の小さい部分を増やして、お得感を最大にする。これが増量無料の基本的な考え方である。
肉2倍は、客単価を押し上げる方向にも働く
麺の増量が原価を抑えた集客策だとすれば、肉2倍は少し性格が違う。肉は麺より原価が重く、無料で倍にすれば利益は確実に削られる。そのため、肉2倍は多くの場合「有料トッピングの試食」として機能する。一度食べて満足した客は、次回から追加料金を払ってでも肉を増やしやすい。
牛丼チェーンが並盛から大盛り、特盛へと客を誘導する手法と同じ構造である。限定の無料企画は、あとから続く有料の習慣を作るための入口にもなる。日ごろ食べない層を呼び込み、好みを覚えてもらう。損益は当日だけで見ず、数か月の購買行動で見る必要がある。
新そばの訴求が、価格競争とは別の軸を作る
新そばは、その年に収穫したそばの実を使う。香りが強く、色も淡い緑を帯びるため、味の違いを説明しやすい。値引きや増量が「量と価格」の競争であるのに対し、新そばは「季節と品質」の競争である。
外食チェーンにとって、価格競争だけに頼る戦い方は体力を消耗する。原材料費も人件費も上がるなかで、安さの競争は長く続けられない。旬という物語を加えれば、同じ価格でも納得して払ってもらいやすい。ボジョレー・ヌーヴォーの解禁やうなぎの土用の丑の日と同じく、旬と記念日を結びつけると、毎年繰り返せる行事に育つ。
記念日が機能するのは、企画が一斉に重なるから
そばの日は法的な祝日ではなく、業界が決めた語呂合わせの記念日にすぎない。それでも各社が足並みを揃えて企画を出すと、消費者の側に「この日はそばを食べる日」という空気が生まれる。単独の店がやるより、複数社が同時に動くほうが話題性は大きい。
セブンのようなコンビニまで参加している点も重要だ。外食と中食の境目が薄れ、昼食の選択肢の奪い合いが激しくなっている。コンビニのそばは、店で食べる駅そばと直接競合する。この日を境にして、各社が自社の強みを見せ合う場にもなっている。
ビジネスへの影響
小さな店でもできる「原価の軽い部分」の増量
同じ手法は、大手チェーンだけのものではない。飲食店なら、ご飯や麺、野菜など、原価が低く満腹感に直結する部分を一日限定で増量する方法がある。小売店でも、量り売りの商品を一割ほど多めに入れる日を決めるだけで、常連の来店頻度が変わる。
ただし、無料にする範囲はあらかじめ数字で決めておくことが大切だ。増量分の原価と、見込める来店数の増加を、一日単位で計算しておく。想定より客が来て赤字になる事態は、準備で防げる。
自社の記念日を作るという選択肢
既存の記念日に乗る方法のほかに、自社の創業日や商品の発売日を毎年の催しにする手もある。記念日は一度定着すれば、広告費をかけずに話題を作れる資産になる。重要なのは、毎年同じ時期に同じ内容を続けることだ。
日本記念日協会への登録も一つの手段だが、登録だけでは客は動かない。店頭の告知、社内の準備、SNSでの発信を毎年続けて、はじめて習慣になる。
無料企画の成果は、翌月まで見て判断する
評価の軸も見直したい。当日の売上や客数だけを見ると、増量は損に見える。大切なのは、初めて来た客のうち何割が再来店したか、有料トッピングの注文がどう変わったかという点である。レジの履歴やアプリの会員データがあれば、一か月後、三か月後に追跡できる。数字が取れない小規模な店でも、新規客の顔を覚える、声をかけて感想を聞くといった方法で、手応えは確かめられる。