ニュースの概要
関東で駅そばを手がける6社が、共同企画の第5弾として、183店舗を横断するデジタルスタンプラリー「沿線を味わおう」を開催する。小田急レストランシステムがプレスリリースで発表した。参加店でそばを食べるとスマートフォン上でスタンプが貯まり、会社や路線の垣根を越えて店を巡れる仕組みである。駅そばは本来、短い時間で手早く食べる日常食だ。そこに「巡る楽しみ」を重ねることで、ふだん使わない路線や駅へ足を運ぶきっかけを作る狙いがうかがえる。競合関係にある各社が手を組む取り組みは、すでに5回目を数える。
引用元: 【関東の駅そば運営会社6社 コラボ企画第5弾】駅そばを食べてデジタルスタンプを集めよう!183店舗横断スタンプラリー 「沿線を味わおう」を開催! | 株式会社 小田急レストランシステムのプレスリリース(PR TIMES)
分析・見解
競合6社が第5弾まで続けられた理由
駅そばは、駅ごと、会社ごとに客を取り合う商売に見える。しかし実際に競っている相手は、同業の他社だけではない。コンビニのおにぎりや牛丼チェーン、ベーカリーなど、短時間で食べられる軽食すべてがライバルである。そばを食べる人の総数が減れば、どの会社も困る。だから6社が同じ旗を立てる意味がある。
第5弾まで続いている点も見逃せない。単発のイベントなら、話題づくりで終わることが多い。回を重ねられるのは、参加店の現場負担が許容範囲に収まり、集客や話題の面で手応えがあったからだろう。共同企画が定番になると、「駅そばは巡って楽しむもの」という見方が少しずつ根づいていく。
183店舗が生む路線をまたぐ寄り道
183店舗は、一人がすべて回れる数ではない。だからこそ、完走を目指す遊び方よりも、自分の生活圏で何軒か集める遊び方が主役になる。通勤で使う路線の店を押さえ、休日に別の沿線へ一駅だけ足を伸ばす。この小さな寄り道こそが、企画の本当の狙いだと考えられる。
鉄道会社の系列店は、本来その沿線の利用者しか相手にしにくい。ところが横断企画なら、他社沿線の客を呼び込める。私鉄の利用者がJRの駅で食べ、逆にJR利用者が私鉄の駅で食べる。会社単独では作れない人の流れが生まれるわけだ。同じ価格帯のそばでも、つゆの色や麺の太さ、かき揚げの大きさは駅ごとに違う。その違いを味わうこと自体が、巡る動機になる。
デジタル化で得るものと失うもの
紙のスタンプ台帳は、持ち歩く手間がかかる。店側も台紙や印鑑を管理しなければならない。デジタルなら、スマートフォンで読み取るだけで済む。参加者は台帳をなくす心配がなく、運営側は「どの店で何人が押したか」を数字で把握できる。183店舗という規模では、この集計のしやすさが大きな価値になる。
一方で弱点もある。駅そばの常連には年配の利用者も多く、スマートフォンの操作に不慣れな人もいる。操作が難しいと、その時点で参加をあきらめてしまう。さらに、回転の速い店で食べながら画面を開くのは少し気まずい。読み取りは、食券を買う前後に一瞬で終わる設計でなければ、現場の流れを止めてしまう。
来店数の先にある客層の違いを読む
成果の測り方にも工夫の余地がある。参加者数は分かりやすい指標だが、本当に知りたいのは、ふだん行かない店に来た人の割合と、企画後も再び訪れた人の数だ。そこまで追えれば、単なる販促を超えて、駅ごとの客層の違いが見えてくる。たとえば朝に強い駅と夜に強い駅では、メニューや提供の速さの最適解が違う。スタンプの記録は、その違いを教えてくれる貴重な資料になる。
ビジネスへの影響
競合と組む共同企画の作り方三か条
この事例は、飲食店や商店街、小売の企画担当者にも参考になる。要点は三つある。第一に、競合と組むことを恐れない。客を奪い合うより、市場全体を育てるほうが得になる場面は多い。第二に、参加条件を軽くする。専用の機器を置かず、QRコードを掲示するだけで参加できる形なら、小さな店も加わりやすい。第三に、費用の分担と成果の共有を、始める前に文書で決めておく。
特に景品や広告費の負担は、揉めやすい部分である。売上に応じて割るのか、均等に出すのかで、参加店の納得感が変わる。
小さな店が参加前に確認すべき混雑対策
参加する店舗側は、現場の混雑を悪化させない工夫が欠かせない。ピーク時にスタンプ目当ての客が増えても、提供が遅れては本末転倒である。QRコードの掲示位置を、券売機の前ではなく、席や出口の近くにするだけでも流れは変わる。スタッフ向けには、問い合わせに答える短い説明カードを用意しておくとよい。
あわせて、スタンプ参加者が来る時間帯を記録しておきたい。休日の昼に偏るなら、仕込みの量や人員配置を見直す材料になる。
効果検証は始める前に物差しを決める
企画が終わってから「何を測るか」を考えると、必要なデータが足りなくなる。始める前に、前年同時期の売上、客単価、新規来店数を押さえておく。見るべきは短期の売上増だけではない。期間が終わったあとも客が残ったかどうかが、企画の本当の成果である。
数字が良くても悪くても、結果は参加企業で共有したい。次回の改善案が出しやすくなり、共同企画が続く土台にもなる。